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きたのふゆ
北の冬
小川 未明
「新小説」1908(明治41)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,166 字 · 11 页
「周蔵にいったら、きっと撃ってしまうだろうね。」と私は炬燵の中に身体を半分もぐり込んでいう。周蔵とは私の村での、年若い猟師である。よくこの男は私の家へ遊びに来た。吃の、頭髪の箒のように延びた、人の好い男である。
「そんなものに、かまうときっと祟りがあるよ。」と母がいった。
「祟りてや、何?」と聞き返す。
「死んでしまうのだよ。」と母がいう。
私は怖しくなって来た。もう日が暮れるのに間がない。それでなくても家の周囲は雪がこいで壁板や、葦簾などが立てかけてあって、高い窓から入る明りばかりだから少し暮方に近くなると表はそうでなくても家の内は真暗だ。
耳を傾げると幽かに烏が啼いている。多分正善寺の杜で啼いているのだろう。母は仕事を取り片附にかかった。私は炬燵に当っていながら、先刻の話の筋を幾たびも思い返している。脊にしている柱にかかった六角時計が、ガタン、ガタンとやっている。煤けた神棚には大黒様がある。古い私の家は何処を見ても黒光のする気持がした。
「雪は止んでいるか知らん。」と母はいって起上った。
「さあお湯へ行って来よう。久しく入らなかったから。」といって私は無理に引き立てられた。