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きただけとあさひだけ
北岳と朝日岳
木暮 理太郎
「改造」1929(昭和4)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,121 字 · 16 页
偃松が出て来た。少し登ると傾斜の緩い高原状をなした段に出る、一面に岩銀杏を敷き詰めた緑の地に、白山一華と珍車の花が白い模様を織り出している。虫取菫の紫花、白山小桜の紅花、深山キンポウゲの黄花など、色とりどりに美しい。登るに従って植物の光景も多少変って来る。高根薔薇の艶麗、高根撫子の可憐、黄花石楠の清楚に加えて、伊吹麝香草、車百合、千島桔梗などが現われ、少し岩の露出した所には、姿のいい真柏や唐松などが生えている。苔桃や岩高蘭も多い。間もなく一の山の頂上に達したが、それは朝日岳ではなかった。南に向って同じような隆起を三つ許り踰えると、朝日岳の頂上に達した。頂上は西南の方向に長い高原状を成している。雨にさいなまれ風に虐げられながらも、自然の儘の恣なる草木の姿よ。皆は荷を投げ出してそこらを歩き廻った。得撫草や、白馬岳では殆ど絶滅に瀕した白馬浅葱の多いのが人目を惹いた。頂上の東側は矢張り草原で、絶えず大雪田が続いている。附近に適当な野営地が見当らないので、惜しくも頂上を南に下り、赤男山との鞍部より百米ばかり上の所で、大雪田から音を立てて水の流れ落ちている窪に天幕を張った。