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じゅうにしこう

十二支考(下)〔全2冊〕

南方 熊楠

南方熊楠『十二支考(下)〔全2冊〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十二支考、十二支考、十二支考、十二支考、十二支考、十二支考。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 251,906 字 · 495 页

青空文庫

『広益俗説弁』三八に、俗説にいわく、菅丞相御歌に「鳥もなく鐘も聞えぬ里もがな、ふたりぬる夜の隠れがにせむ」。これは太田道灌の『慕景集』鳥に寄する恋「世の中に鳥も聞えぬ里もがな、二人ぬる夜の隠れがにせむ」とあるを、菅原の詠と誤り伝えたのだとあって「鳴けばこそ」の歌は『天満宮故実』等に出ると言ったが、『天満宮故実』という物、余見た事なく、確かな書籍目録にも見えぬ。想うに道灌の「世の中に」の詠を真似て後人が「鳴けばこそ」の一首を偽作したのであろう。元禄時代の編てふ『当世小唄揃』には「鳥のねも鐘も聞えぬ里もがな、二人ぬる夜の隠れがにせん」とある。「人を助くる身を持ちながら暁の鐘つく」糞坊主と斉しく、鶏の無情を恨んだ歌はウンザリするほどあって、就中著名なは、『伊勢物語』に、京の男陸奥の田舎女に恋われ、さすがに哀れとや思いけん、往きて寝て、夜深く出でにければ、女「夜も明けば狐にはめけん鶏の、まだきに鳴きてせなをやりつる」。後世この心を「人の恋路を邪魔する鳥は犬に食われて死ぬがよい」とドド繰ったものじゃ。『和泉式部家集』五、鶏の声にはかられて急ぎ出でてにくかりつれば殺しつとて羽根に文を附けて賜われば「いかゞとは我こそ思へ朝な/\、なほ聞せつる鳥を殺せば」