轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

国枝史郎『十二神貝十郎手柄話』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十二神貝十郎手柄話、加利福尼亜の宝島。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 页

青空文庫

この私を。……私は女に裏切られた男だ」

新八郎はこういうように云って、自分の前へつつましく坐り、うなだれているお品の額へ、そのきゃしゃな手をやった。ほつれている髪を上げてやったのである。お品は頷くばかりであった。

(妾もほんとにこのお方が好きだ。何の妾が裏切ろう。妾は決して裏切りはしない。でも、ある強い外界からの力が、妾を裏切らせようとしている)

お品にはこれが苦しかった。どう云って返辞をしてよいか? それも解らなかった。頷くばかりで黙っている理由はこれであった。

ふとお品は新八郎へ訊いた。

「お勘定奉行の松本伊豆守様とおっしゃいますお方は、どういうお方なのでございましょう」

「厭な奴らしい」

新八郎は吐き出すように云った。

「賄賂取りの名人だ。自分でも随分賄賂を使う。田沼侯へ贈賄して、あれまでの位置になった奴だ。……だがそれがどうかしたかな」

「はい。……いいえ」

と曖昧に云った。そう曖昧に云って置いて、お品は愁然とした。

「そのお方のご用人だとかいうお方が……」

「お前を見初めたとでも云うのかな?」

「でも妾はどうありましょうとも。……」

「…………」

この日の午後は晴れていて、この家の裏庭に向いている障子へ、木の枝の影などが映っていた。