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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし

十二神貝十郎手柄話

国枝 史郎

国枝史郎『十二神貝十郎手柄話』。同一底本的分册已合并为一书。收入:十二神貝十郎手柄話、加利福尼亜の宝島。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 127,035 字 · 254 页

青空文庫

新八郎の好奇心は、いよいよたかぶらざるを得なかった。でこれも後をつけた。例の屋敷の前まで行った時、それが松本伊豆守の別邸であることに感付いた。

「ふうん」

と何がなしに新八郎は呻いた。不安と憎悪と敵愾心とが、ひとつになったものを感じたからである。

(駕籠の中に伊豆守はいるのかな? 箱の中には何があるのか? そうしてあの箪笥の中には?)

(こんな深夜にどこへ行くのか?)

疑惑が疑惑を次々に生んだ。と、その時新八郎は、背後から含み声で声をかけられた。

「小糸氏、お遊びのお帰りかな」

驚いて新八郎は振り返って見た。三人の武士が背後にいる。

六

一人は彼と顔見知りの、十二神貝十郎という与力であり、後の二人は知らなかったが、どうやら風俗や態度から見て、貝十郎の輩下にあたる、同心のように思われる。

「や、これは十二神氏か」

新八郎はテレたように云った。声をかけたのは貝十郎であった。

「遊ぶもよろしいが程々になされ」貝十郎は愉快そうに云った。「随分お噂が高うござるぞ。何んにしてもこのような寒い季節に、ブラリブラリとこのような深夜に、お歩きなさるのは考えもので。