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じゅうえんさつ

十円札

芥川 竜之介

穷得叮当响的作家堀川保吉,口袋里只剩六十钱,却还惦记丝帽、音乐会和女人。一张十円钞票的出现,能让他体面地撑过这一天吗?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,647 字 · 18 页

青空文庫

」

「実際必要はないんです。難有うございますが、……」

粟野さんはちょっと当惑そうに啣えていたパイプを離しながら、四つ折の十円札へ目を落した。が、たちまち目を挙げると、もう一度金縁の近眼鏡の奥に嬌羞に近い微笑を示した。

「そうですか? じゃまた、――御勉強中失礼でした。」

粟野さんはどちらかと言えば借金を断られた人のように、十円札をポケットへ収めるが早いか、そこそこ辞書や参考書の並んだ書棚の向うへ退却した。あとにはまた力のない、どこかかすかに汗ばんだ沈黙ばかり残っている。保吉はニッケルの時計を出し、そのニッケルの蓋の上に映った彼自身の顔へ目を注いだ。いつも平常心を失ったなと思うと、厭でも鏡中の彼自身を見るのは十年来の彼の習慣である。もっともニッケルの時計の蓋は正確に顔を映すはずはない。小さい円の中の彼の顔は全体に頗る朦朧とした上、鼻ばかり非常にひろがっている。幸いにそれでも彼の心は次第に落着きを取り戻しはじめた。同時にまた次第に粟野さんの好意を無にした気の毒さを感じはじめた。粟野さんは十円札を返されるよりも、むしろ欣然と受け取られることを満足に思ったのに違いない。