轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じゅうばんざっき
十番雑記
岡本 綺堂
「思ひ出草」相模書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,745 字 · 16 页
年賀状は廃するつもりであったが、さりとて平生懇親にしている人々に対して全然無沙汰で打過ぎるのも何だか心苦しいので、震災後まだほんとうに一身一家の安定を得ないので歳末年始の礼を欠くことを葉書にしたためて、年内に発送することにした。その外には、春に対する準備もない。
わたしの庭には大きい紅梅がある。家主の話によると、非常に美事な花をつけるということであるが、元日までには恐らく咲くまい。(大正十二年十二月二十日)
二 箙の梅
狸坂くらやみ坂や秋の暮
これは私がここへ移転当時の句である。わたしの門前は東西に通ずる横町の細路で、その両端には南へ登る長い坂がある。東の坂はくらやみ坂、西の坂は狸坂と呼ばれている。今でもかなりに高い、薄暗いような坂路であるから、昔はさこそと推量られて、狸坂くらやみ坂の名も偶然でないことを思わせた。時は晩秋、今のわたしの身に取っては、この二つの坂の名が一層幽暗の感を深うしたのであった。
坂の名ばかりでなく、土地の売物にも狸羊羹、狸せんべいなどがある。カフェー・たぬきというのも出来た。子供たちも「麻布十番狸が通る」などと歌っている。