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ちよこ(さん)
千世子(三)
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,906 字 · 54 页
ゴンドラの形をした紙切りをはさんだ読みかけの本の頁をやたらにバラバラとめくったりして眠るまでの時間の費し方を考える様な様子なんかした。
誰か来ればいいのに――
門の外を通る足音に注意したりわざわざ女中を呼んで、
誰か来るっていいやしなかったかえ。
ときいたりなんかしたほど千世子には友達の来るのが待たれた。
かなり夜になっても誰あれも意志の悪い様に訪ねて来なかった。
我まんが仕切れなくなって、
お前ほんとうに、お気の毒だけどねえ、
一寸行ってお京さんを呼んで来てお呉れな。
どうでも来ていただかなければならないんですからってね。
と口上を教えて女中を一番近所に住んで居る京子の所へ迎にやった。
十五分許してから京子が書斎に入って来た時千世子は待ちくたびれた様にぼんやりした顔をしてつるした額の絵の女を見て居た。
今日は大変御機嫌が悪いんだってねえ、
どうしたの。
笑いながら京子は千世子の顔を見るとすぐ云った。
御機嫌が悪い?
歌を唱わなけりゃあ御機嫌が悪いんだと一人ぎめして居るんだものいやになっちゃう。
それに又彼の女にはその位の観察が関の山なんだものねえ。