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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

「何にもお前に関係のある事じゃあないじゃないか」

「そうには違いないけど阿母さんそうお思いなさらない?」

「ほんとうにどんな血とどんな脳髄をもって居るんでしょう、犬だって猫だって食べない肉をもってるんでしょう」

「いけませんでしたネエ、貴方のいらっしゃるところでするべき話じゃあなかったんですけど、つい……」

「は、一寸感じるとこうすぐ変になっちまうんですから……」

あんまり亢奮した千世子は二人の話して居る事をぼんやりと遠くの方にきいて居た。

「あんた、ほんとうに可哀そうな方ねえ、どうしてそんななんでしょう、あなたがさっきおっしゃった事大変気に入っちゃったんです、きのうより倍もすきな方になってしまった」

千世子ははれぼったい顔をしながら云った。

「同情して下さるんですか。ほんとうにありがとう。でもどうぞあんまり亢奮しないで下さい、こな事はつまるところ私の馬鹿だったお坊っちゃんだった証拠なんですし又こんな目に会うほど私はしょうどなしでもありませんから……」

悲しいあきらめがさせる様にHは苦しい笑い方をした。

「ねえ奥さん、あたり前の男なら私位の年にもなって女なんかにすてられたりすればすぐ忘れられるし又それを再びするほどすれた人が多いでしょう? けれ共、どうしても私にはそれが出来ないんです、私は女と云うものを始めてのぞいた