轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ちよこ
千世子
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页
一人一人の顔を笑って見ながら溜息をつく様にひびく声で云った。
母と小供は車にのって帰るから千世子にも車で行けと云われた時、
「ざっと一月ですもの電車にのって見とうござんすワ」
とあまったれて父親をひっぱったのも千世子には珍らしい様子であった。
こんだ電車の中につめこまれてゆれるたんびにHと体のぶつかるのや、父親のところによろけるのや、夕刊うりのこえや、そんなものは皆千世子にはうれしく思われたり見えたりする事柄だった。
電車からの十五六丁の道も歩いて初めて自分の生れた家の柱を見た時とびついて頬ずりしたいほどなつかしい光をもって居た。
さぞ汚れて居るだろうと思ってあけた自分の部屋には額がかけかえてあって机の上には新らしい雑誌が二冊ちゃんとならんで、赤茶色の素焼の鉢にはうす赤のふるえる様な花が千世子の方にその面をむけて笑いながら首をかたむけて居た。
ピアノのキイを小指でつっついて見たり、本をパラパラとくって見たり皆とじょうだん口をきいたり、外のすっかりくらくなってしまうまで千世子はジッと座って居る事さえ出来ないほどだった。
留守をして居た弟達はうれしがって居る自分達の姉の体を胴上げにしないばっかりにその小さい子供と一緒にかこんで鬨をあげる様に笑いながら一っかたまりになって家の中をめぐって歩いた。