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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

千世子はそのはっきりしない答えが気に入らなかった。

「じゃあんたはどう思っておいでなさる? 私の様にか阿母さんの様にかそれとも又別の……」

「私はごく平凡な事を思ってます。あんまり常軌を逸して居なければそんなにああこう云いやしません、世の中の事ってのは或る程度まで人なみにやって行くことが心要なんですから……」

「そう云うお考えなら私と阿母さんの間に入って好いお考えなんですねエ」

千世子は頭のすみに今日一日中考えた事のかすがたまってでも居る様に重い片っ方にかたむきそうに思われて来た。時計はもう二時すぎをさして居た。阿母さんは自分で話の問題を出して置きながらすみの椅子によっかかって白いかおをかたむけて快さそうに居ねむりをして居た。

「ねえHさん、あんな事をしてる阿母さんを見るといかにものんきな考えのないものの様に見えますねえ」

母親のおだやかなかおを見ながら千世子は云った。

「あんたは、あんまり阿母さんや何かを批評的に見るからいけないんですよ、だから阿母さんのする事が妙に不愉快に思えたり馬鹿な事をして居ると思われたりするんです……」

「そうでしょうか……」

千世子は目の前に下った三本ばかりの髪をより合せながら気のない返事をした。