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ちよこ

千世子

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年11月25日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 83,104 字 · 164 页

青空文庫

哲学的の事を思いなやんだりして両親からは妙な子だと云われながら自分で自分の心を信じて深いたくらみのある様にうす笑をしたりして居た。千世子はどっちかと云えば、ずんぐりのわりに顔の太って居ない男の様な額と神経質な眼、爪のやたらに小さい手を持って居る。顔の変化のやたらに目立つのがくせだけれ共笑う時にはいつでも顔いっぱいに笑う女だった。気にしないと云うわけではなくっても髪なんかをそんなにかまわない、いつでもまん中から両わきに分けた髪に結って居る。あんまり仰山な着物より気のきいた柄の銘仙の上に縮緬の羽織をかけたのが一番気持がいいと口ぐせに云って、お召のあのしんなりした肌ざわりをすいて居た。

人ぎらいのしない千世子のまわりには沢山の人達がよったりはなれたりして居た。

丁度女王が沢山の朝臣を謁見するその時だけ一人一人の名前で思い出す様に千世子に一寸でも考えさせたり忘られない様にする人なんかはただの一人もなく千世子を中心に遠くに輪を描いて廻って居るばっかりであった。中でたった三人千世子のごくそばに輪を描いて居る人達で、飯田町の信夫、従兄の源さん、工学士のH、そんな人達がある。