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ちよがみのはる
千代紙の春
小川 未明
「少女倶楽部」1923(大正12)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,985 字 · 11 页
」といわれました。けれど、美代子のお父さんは、
「それはめでたいこった。きっと美代子の病気はなおってしまうだろう。」と、ちょうどあの髪の長い、易者がいったようなことをいわれました。
そして、おばあさんが、こいが逃げたときのことをくわしく、みんなに話しますと、うちじゅうのものは、そのときの有り様がどんなにおかしかったろうといって、声をたてて笑いました。美代子さんは、明るい燈火の下でこの話を聞いていましたが、やはりおかしくてたまりませんでした。そして逃げていったこいは、いまごろどうしたろう。河をのぼって、自分の故郷へ帰ったろうか。そうであったら、こいの子供や、お友だちは、どんなに喜んで迎えたろうと考えました。
おばあさんは、たもとの中から、美しい千代紙を出して美代子さんに与えました。
「この千代紙は、こい売りのおじいさんが、孫に買っていってやろうと思ったのを、おまえが病気だというのでくれたのだよ。」と、おばあさんはいわれました。
「しんせつなおじいさんですね。」と、美代子さんのお母さんは、いわれました。
「こいのかわりに、千代紙をもらったのさ。」と、お父さんは笑われました。