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せんりがんそのた
千里眼その他
中谷 宇吉郎
「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页
それを当時直ちに精細に論じ、敢然として学界の長老に抗議した札幌の農大の一学生があった。その学生は現在の北大の理学部長小熊捍博士である。学界の因襲について知識の少い一般の人たちには、こういうことが如何に困難であるかは、ちょっと想像出来ないのである。こういう感謝されざる名医は外にもあったことであろう。そして万事は芽出度く納ったのである。
ところが此処で念のために、前に言った生物線のことをちょっとつけ加えておく必要がある。
生物線ということを初めて言い出したのは、モスクワ大学のグールウイッチ教授である。同教授は初め玉葱の根の細胞の有糸分裂を研究していた。その時他の玉葱の根の先端を横に置くと、その方に向いた側の細胞の分裂が盛になると言い出したのである。この時途中に硝子板を置くと作用が消えるが、水晶板を置いてもなくならない。それで硝子には吸収されるが水晶は通る線、丁度紫外線のような性質の線が、増殖中の細胞から出て、他の細胞がその線に照射されると分裂が促進されると考えたのである。
グールウイッチはこの線をミトゲン線と名付け、細胞分裂の際にはこういう今まで全然知らなかった放射線が出ると考えた。