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せんりがんそのた

千里眼その他

中谷 宇吉郎

「文藝春秋」1943(昭和18)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,478 字 · 26 页

青空文庫

動物に癌を植えたらその血液からは出なくなったなどという研究が沢山専門学者の手で発表された。

これだけの研究があったら、もう生物線も確認されたといってよいのであるが、不思議なことには、この線はその性質上当然写真乾板に感光するはずなのに、その実験はいつも否定的に終っている。シューマン乾板という極紫外線用の乾板を、生物線を出しているはずの生体に数カ月露出しても、全然感光しなかったという結果も発表されている。

写真乾板に感光しないのは、暗い所では生物線が出ないのかもしれないし、また写真に感光するには弱すぎるのかもしれない。それで光電作用を利用した計数管というどんな弱い放射線でも感ずる器械を用いて、精密な測定をした物理学者が沢山あった。その結果もまた面白いことには半信半疑なのである。これに関する一九三五年までに発表された十二の論文のうち、六人の学者はあると言い、六人の学者は嘘だという結果になっている。

その後の最近の研究のことは知らないが、決定的のことはまだ言えないようである。生物線は生物から出てもその線自身は物理現象である。ところが物理的には依然として証明されない物理現象が、これほど沢山の研究の種になっているのである。