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はんしちとりものちょうのおもいで
半七捕物帳の思い出
岡本 綺堂
「文芸倶楽部」1927(昭和2)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,524 字 · 4 页
大岡政談や板倉政談はむしろ裁判を主としたものであるから、新に探偵を主としたものを書いてみたら面白かろうと思ったのです。もう一つには、現代の探偵物語をかくと、どうしても西洋の摸倣に陥り易い虞れがあるので、いっそ純江戸式に書いたらば一種の変った味のものが出来るかも知れないと思ったからでした。幸いに自分は江戸時代の風俗、習慣、法令や、町奉行、与力、同心、岡っ引などの生活に就ても、一通りの予備知識を持っているので、まあ何とかなるだろうという自信もあったのです。
その年の六月三日から、先ず「お文の魂」四十三枚をかき、それから「石灯籠」四十枚をかき、更に「勘平の死」四十一枚を書くと八月から『国民新聞』の連載小説を引受けなければならない事になりました。『時事』と『国民』、この二つの新聞小説を同時に書いているので、捕物帳はしばらく中止の形になっていると、そのころ『文芸倶楽部』の編輯主任をしていた森暁紅君から何か連載物を寄稿しろという註文があったので、「半七捕物帳」という題名の下に先ず前記の三種を提出し、それが大正六年の新年号から掲載され始めたので、引きつづいてその一月から「湯屋の二階」