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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
09 春の雪解
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,208 字 · 30 页
彼はあくまでその不思議の正体を突き止めたかった。その晩は徳寿に別れて、神田の家へまっすぐ帰ったが、あくる朝、浅草の馬道にいる子分の庄太を呼びにやった。
「おい、庄太。廓は田町の重兵衛の縄張りだが、おれが少しちょっかいを出して見たいことがあるんだ。てめえ一つ働いてくれ。江戸町に辰伊勢という女郎屋があるだろう。あすこの誰袖という女のことを少し洗って貰いてえんだ」
「誰袖は入谷の寮に出ていると云うじゃありませんか」と、庄太は心得顔に云った。
「それを調べてくれと云うんだ。実は少しおれの腑に落ちねえことがあるから……。つまりあの女には情夫でもあるか、なにか人から恨みでも受けているようなことでもあるか。それから如才もあるめえが、その辰伊勢という店の内幕も一と通りは調べあげてくれ」
「わかりました。二、三日中にはみんな調べあげてまいります」
庄太は受け合って帰った。二、三日という約束が四、五日を過ぎても、庄太は顔を見せなかった。あいつ何をしているのだろうと思ったが、一日を争う仕事でもないので、半七もそのまま打っちゃって置くと、二月の初めになって庄太がぶらりと訪ねて来た。