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なんぼくアルプスつうせつ
南北アルプス通説
木暮 理太郎
「日本アルプス」1930(昭和5)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,372 字 · 11 页
火口湖や火口原湖は別としても、北アルプスでは五色ヶ原や雲ノ平に散在する無数の小池、五郎ノ池、双六ノ池、薬師ノ池というように、到るところの窪地に清澄な水が溢れて、登山者の渇を癒し目を楽ませる。南アルプスの山上を旅する多くの人が、何か心の隅に満たされない欠陥があるのを覚えるのは、二、三の池はあっても水の流れた跡のみであることなどが、かなり重要な原因となっているように思われる。水の少いことは即ち山が乾燥していることである。勿論降雨の関係もあるから残雪の多少や有無で、簡単に乾いた山と湿った山との区別が立てられるものではないが、さりとてまたその有無多少は、山の乾湿に大なる影響を及ぼすものであることも否めない。従ってお花畑をなす高山植物の種類などにも変化が現れる筈である。北アルプスに多い桜草属の紅い美しい花が、南アルプスに普通に見られないのは、分布区域の外であるためかとも思われるし、或はその生育に必要なだけの水分が平素不足しているためではないかとも考えられる。けれどもこれらについては専門の士の記述に待つことにする。
氷河の遺跡といわれているカールは、北アルプスでは中に多量の万年雪を蔵して、長い雪渓がそれから流れ出したように続いている。