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なんとうをおもいて

南嶋を思いて

新村 出

――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,941 字 · 14 页

青空文庫

篇の中で伊波君が着々研鑽に従われているのを見ると愉快に堪えない。本土との交通史料として引かれた「おもろ」の一節に、

楠木はこので

大和船こので

やまと旅のぼて

山城たび登て

瓦買ひにのぼて

てもつ買ひにのぼて 〔十―二八〕

とあるが如きは、古詩を読むような感を起させる。「可憐なる八重山乙女」が白明井のほとりで歌う絶唱、宮古島の名もない詩人が八重山おとめを歌うた長い鄙歌共にこれを誦すれば、いよいよ南島の空がなつかしくなる。八重山島の「鷲の鳥の歌」の雄渾なる風姿は南国の高調ともいうべきか。

大あこうの根ざしに

なりあこうの本ばいに

一の枝ふみのぼり

七の枝ふみのぼり

一びらい巣ばかけ

七びらい巣ばかけ

一びらい卵が産し

七びらいこがなし

と二十二句から成る頌歌である。

八重山宮古の島々は独り歌謡のきわだっているばかりでなく、極南界にあってその言語音韻も純古にして北の島嶼とは趣を異にする。康煕末年の『中山伝信録』の類また三十六島の方言差別をまま記入してはあるが、断片的に過ぎぬ。十九世紀の初頭アーデルングらの『言語集』(第一巻、第四巻)にも八重山及太平山(宮古)二島の方言について一言するは、西欧探検家及地理学者らの所説に基いたものらしいが、極めて曖昧なるを免れぬ。