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なんぽうゆうしん
南方郵信
中村 地平
「文學界 第五巻第四号」文藝春秋社、1938(昭和13)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,899 字 · 42 页
そういう時、婆さん達は頼まれもしない映画の呼び入れ役を、自分から買って出るのである。
「そこを通る若い衆。ちょっと寄って行きならんか。活動ば見て、梨ば食べれば後生楽じゃがな。夏は冬じゃないがな。日が長いがな」
旦那がこの村の文化に貢献したところを並べたてていては限りがないが、一度などは小学校に音楽隊を寄付したこともあった。
これは比較的最近のことである。学校当局は旦那の厚意を非常に喜んで、先ず音楽隊を組織する条件として、特に袴を持っている高等科の児童ばかり六名を選んだ。そして各々に大太鼓や、小太鼓や、喇叭などを与えて、毎日放課後に練習させた。ただクラリオネットだけは、吹奏が難しい上に、幼い肺臓では呼吸器を傷う恐れがある、という校医の意見を尊重して、長友先生に受けもたせた。長友先生は将来は東京に出て、音楽家になりたい野心なのである。
音楽隊が部落を行進する時、村の人気は大変なものである。
例えば郷社の大祭とか、郡の連合会などのために、全校の児童たちが隣り町へ出かける時には、必ずこの音楽隊が行列の先頭にたって歩く習慣である。そのあとから賑かな楽隊の音に脚なみを揃えて、六百十三名の児童が行進する。