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なんぽうゆうしん
南方郵信
中村 地平
「文學界 第五巻第四号」文藝春秋社、1938(昭和13)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,899 字 · 42 页
二三日前、入港した第二海竜丸が、上方から山羊を廻漕してきたのである。
第一、第二の海竜丸は旦那の有ち山や山畑からとれる木炭や米やを、年に一度か二度、上方に運び、帰りには肥料や呉服物など、その地方に無いものを廻漕してくる。それによって旦那は安いコストで木炭や米やを関西地方に売りさばくことができ、帰りには依託された商品の運賃をまるまる儲けることができる。大変合理的な事業なのである。
第二海竜丸の木山船長は子煩悩なくせに子供がない。だからいつも三太のために気をきかして、空気銃や、玩具の自動車や、美しい絵本や、田舎には珍しいものを、必ず一つか二つ積んで帰ることを忘れない。第二海竜丸が入港した、と聞くだけでも、三太は嬉しくて夜も眠れない位になるのが普通である。
裏庭へとびだしてみると、山羊の夫婦は小伝馬船から川岸へあげられ、丁度、裏門から入ってくるところであった。首に綱をつけた牡山羊を木山船長が、牝山羊を仲仕の「ヤの字」が引っぱっている。
まっ黒な羅紗地の詰襟服を着こんでいる木山船長は、三太を見ると、金モールの徽章がついている制帽を脱いで、微笑を浮べた。