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なんきょくのかいじ

南極の怪事

押川 春浪

「中学世界」1905(明治38)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,508 字 · 33 页

青空文庫

に落ち込み、失敗たと叫びしまでは記憶すれど、その後は前後正体もなくなったり。

七

気絶せる間は眠れると同じくまた死せると同じく。時刻のたつを知らず、それより一時間過ぎしか一日過ぎしか、それとも一週間以上過ぎしやを覚えねど、余は夢ともなく現ともなく、ふとしたたかに余の頭を打つ者あるように感じて眼を開けば、余はなお生きてあるなり、心づけば船の動揺はなお止まず、余はある時間の間気絶せる後、またもや打ち寄する巨浪のために、船は激しく傾き、一方より一方にまろんで頭を打ち、今ようやく息を吹返せるなり、他人が余の頭を打ちしにあらず、余自ら頭を打ちつけしなり、とにもかくにも起きあがってその辺を捜りまわるに、何時の間にか海水は浸入して、余の全身は濡鼠のごとくなりいたり、船底より浸水せしものか、それとも、甲板の昇降口より波打込みしものか分らねど、何しろこの海水のために余の身辺の燈火は消えて四方は真暗く、ただ船内ズット船尾の方に高く掲げられたる一個の船燈のみが、消えなんとしていまだ消えず、薄気味悪き青光をかすかに洩すのみ、時刻も分らず場所も分らず、時計を出して見るに、その針はすでに停まりいたり、余の時計は二日持にて、かの悲劇の起る