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なんきょくのかいじ

南極の怪事

押川 春浪

「中学世界」1905(明治38)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,508 字 · 33 页

青空文庫

今船はいかなる状態にていかなる方角に進めるやも分らず、余は意気地なきようなれど、心細さは次第々々にましてついに堪らず、おりから面前に歩み来れる船長に向っていきなりに問えり、「めざす絶島にはいつ達すべきや」と、もとより手真似の問答なればしかとは分らねど、船長は毛だらけの手を前後左右に振って

「達すべき時にあらざれば達せず」と、無愛相に答えしようなり。彼はそのまま行き過ぎる、余はとりつくしまもなし、艫の方を見れば七人の水夫、舵を取り帆を操りながら口々に何か語り合う、その声あたかも猿のごときが、ふと何物をかみつけけん、同時に話声をやめてとある一方に眼を注ぐ、余も思わず釣りこまれて、彼等の眼の向う方角を眺むれば、そこは西南の方水天一髪の辺、かすかにかすかに一点の黒き物見ゆ、巨鳥か、鯨か、船か、島か。島ならばあれこそめざす絶島と思えど、どうも島にてはなきようなり、島にあらずば何か、余はいかにもしてその正体を見届けんと、なおしばらく甲板を去らざりしが、かの黒き物は近づくごとく、近づかざるごとく、そのうちに日はまったく暮れて海上暗くなり、わが船上に一点の燈火輝くのみ、四方の物まったく見えずなりしかば、余は詮方なく、船中に唯一個ある