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なんがをかくはなし
南画を描く話
中谷 宇吉郎
「中央公論」1941(昭和16)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,968 字 · 24 页
しかしそういう千古の謎にかかわっていることは止めて、先へ急ぐことにする。
今の場合と同じことを絵について言うと、極めて簡単なタッチで、小豆粒大の人の顔を見分けさせ、その上表情まで出していることになる。そしてそういうことが可能である所以は、描かれたものの形や色にあるというよりも、むしろ見る人の眼と頭とに具有されている各種の要素についての差の綜合認識作用にあるのであろう。
そう考えれば話は大変巧いので、絵の良し悪しの責任は、半分は見る人に負わせられることになる。特に墨絵のように簡単な線と一色の濃淡だけしか使わないものでは、この見る人の眼と頭との作用を極度に利用する必要がある。
こういう風に言って見ると、結局東洋画の真髄は観者を共同製作者とするにあるという昔からの言い旧された言葉を、妙な理窟で解説しただけのことだといわれるかも知れない。しかしまあそれでも良いということにしよう。
ところでこういう理窟が分ったとして、それを実際に応用して名画を描くとなると、どうしてよいか、ちょっと困ってしまう。以上はいわば精神論だけであって、それを活かす技術を研究しないでは、この頃流行の或る種の議論見たようなものである。