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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

こんなことを口の中で呟きながら、風船売の少年は、障子の穴から覗いている。

日がだんだん暮れてきた。南蛮寺の鐘も今は止み、合唱の声も止んでしまった。

庭木の陰が次第に濃くなり、夜が間近く迫ってきた。

と、突然家の内から、「これ、誰だ。覗いているのは!」弁才坊の声がした。

「ワッ、いけねえ、目つかっちゃった」

石から飛び下りた風船売の少年、庭木の陰へ隠れたが、その素早さというものは、人間よりも猿に近い。

と内から窓があき、顔を出したは弁才坊で、グルグルと庭を見廻したが、神経質の眼付、ムッと結んだ口、道化た俤など少しもない。眼を付けたは窓下の石!

「石を足場にして覗いたな、さして高くもない窓だのに……とすると子供に相違ない。が、子供でも油断は出来ない……民弥々々!」と声をかけた。

「はい」と民弥が顔を出した。「近所の子供でございましょう。無邪気に覗いたのでございましょう」

そういう民弥こそ無邪気であった。

「さあそいつが解らない」いぜん弁才坊は不安らしい。「私の探った秘密というものは、一通りならぬものだからな。いろいろの人間が狙っていよう」

「申す迄もございません」