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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

オットいけねえ、軽はずみな、またまた口が辷ってしまった。アッハハハ馬鹿な話で、何のお嬢様、人形などが、何の物など云いましょう。へいへい物など云いませんとも、いえナニ物でも云いそうな程、さも活々とよく出来た、結構な人形でございますので、そこで高値にいただこうと、こういう次第なのでございますよ。では」と云うと猪右衛門は懐中へ腕を差し込んだが、ヒョイと抜き出すと掌の上に、小判を一枚のっけている。「まず小判、お取りなすって」もう一度懐中へ手を入れたが、取り出したのは青差である。「これは青差、お取りなすって」

「はいはい確かに受け取りました」

こう云うと民弥は窓越しに、小判と青差とを受け取ったが、引き返すと卓の側へ行き、卓に載せてある人形を、優しく胸へ抱きかかえた。

と、窓から人形を、猪右衛門へ渡したものである。

両手で受け取った猪右衛門は謂うところの北叟笑、そいつを頬へ浮かべたが、「これで取引は済みました。ではお嬢様え、ご免なすって」

「可愛い人形でございます、大切に扱って下さいまし」

永年の間傍へ置き、慣れ馴染んで来た人形である。それが売られて行くのである。