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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

「お姫様には神通力、お鏡を通して浮世の相を、ご覧になることが出来ましょうが、この浮木はほんの凡人、何にも見えませんでございます。ほんとにそんな人達が、走って来るのでございましょうか?」

「ああそうとも走って来るよ、一人は若武士、一人は娘、後の二人は香具師らしいよ。卑しい服装をしているからね」

じっと鏡に見入ったが、尚も唐姫は云い続けた。

「それも普通の人達ではないよ、私達一同が以前から手に入れようと望んでいた、唐寺の謎を解き明かした、研究材料を持っている、そういう好都合の人達なのだよ」尚も熱心に見入ったが、「もう北野も通り過ぎた、大将軍まで走って来た、もう直ぐにも小北山へ来る。……ああもう小北山も通り過ぎた、いよいよ平野へやって来た。……衣笠山! 衣笠山! 衣笠山の裾まで来た!」

ほんとにどうしてそんなことが、この唐姫には解るのだろう? 月光に反射して朦朧と、鏡は光っているばかりである。そんな人影など映っていない。

それにもかかわらず唐姫にだけに、そういうことが解るのなら、唐姫という女には、特別に違った感覚が、備わっているものと見なければならない。

と、唐姫は立ち上った。