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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

へ! さあさあお連れ下さいまし!」

「うむ、しめた!」と云ったように、老人は凄く笑ったが、「合点々々お連れしますとも! さあさあ急いで参りましょう。私の家は柏野で。そこにあるのでございますよ。少し遠いが元気を出し、走って行きましょう、走って行きましょう!」

そこで二人は走り出した。

往来の人が振り返る。さも不思議そうに二人を見る。一人は兇相の老人である。一人は無邪気な娘である、それが走って行くのである。不思議そうに見るのは当然だろう。

だが民弥は夢中であった。人に見られようが笑われようが、心に掛けようとはしなかった。一刻も早く右近丸様に、逢いたい逢いたいと思うのであった。

二人はズンズン走って行く。

22

ここは柏野の一画である。

そこに一軒の家があった。

見掛けは極めて陰気ではあったが内は反対に陽気であった。

その陽気な奥の部屋に、十五六人の男がいた。

歌をうたっている者、酒を飲んでいる者、詈っている者、議論している者、取っ組み合っている者もある。いずれも兇相の連中である。その風俗も様々である。神主風の者もある。商人風の者もある。坊主風の者もある。