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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

武士姿をした者もあれば、香具師風をした者もある。老人もいれば若者もいる。女も二三人雑っている。

ガヤガヤみんな喋舌っている。

「近来は思わしい仕事がない」

「こう不景気では仕方がない」

「地方へ行かなければならないだろう。都に仕事がないのだから」

「今日も戦、昨日も戦、地方へ行くと戦ばかりだ、若武者の鎧を引っ剥いでも、相当の儲けはあるだろう」

「逃げまどう落城の女どもを引っ攫うのもいいだろう」

突然一人が歌い出した。

※(歌記号、1-3-28)人買船の恐ろしや

するともう一人が後を続けた。

※(歌記号、1-3-28)どうせ、売らるる身じゃほどに

するともう一人が後を続けた。

※(歌記号、1-3-28)しずかに漕ぎやれ船頭殿

人買船の歌なのである。

とその時奥の部屋から女の泣声が聞こえてきた。

「まだあの女は泣いているわい」

「どうせ売られて行く女だ、思うさま勝手に泣くがいい」

昼だというのに部屋の隅に、幾本か紙燭が燈されている。話声を戸外へ洩らすまいと、雨戸を閉ざしているからである。壁には影法師が映っている。床の上では狼藉とした、銚子や皿小鉢が光っている。

綺麗な娘を攫って来て、遠い他国へ売り渡す、恐ろしい恐ろしい人買共の、此処は巣であり会所なのであった。