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なんばんひわもりうこんまる

南蛮秘話森右近丸

国枝 史郎

「少女倶楽部」1927(昭和2)年4月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,869 字 · 112 页

青空文庫

続いて勘八が声をかけた。「素敵な玉でございますなあ」

「ざっとした所がこんなものさ」老人は凄じく笑ったが、娘の方を振り返った。「何とか云ったね、民弥さんか! 大概は見当が付いたろうが、ここに居るのは人買だ。そうしてここは人買宿、そうして私は人買の頭、柏野の里の桐兵衛だよ。……もう、いけない観念おし、どんなに泣こうが喚こうが、ここへ一旦来たからには、一足も外へは出られない。と云って殺すというのではない。当分大事に飼って置き、行儀作法を教えてから、遠国の大名や金持や、廓の主人へ売り渡す。……ナーニ大して心配はいらない。ちょっと心さえ入れ変えたら、案外立身出世もする。だからよ、万端、委かして置きな。……オイ野郎共!」と手下を見た、「二階へ連れて行くがいい、手に余るほどあばれたら、体に傷の付かぬよう、革の鞭で手足を引っ叩け!」

「合点」と云って立ち上ったは、例の小男の勘八であった。

「さあ娘ッ子、二階へ行こう」

むっと民弥の手を取ったが、その結果は意外であった。あべこべに民弥に腕を取られ、グッと逆手に返されたのである。

「さてはお前達は悪人だね!」

いわゆる裂帛の声である! 勘八を向うへ突き倒し、その手を帯へ差し入れたが、抜いて握ったは嗜みの懐刀、振り冠ると凜々しく叱咤した。