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なんろ

南路

宮本 百合子

「太陽」1922(大正11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页

青空文庫

細胞が脆弱になり抵抗がないので、少し暑気が激しいと、美しい皮膚が、惨めな汗瘡で被われる。一言でいえば、彼女の裡にある生活力が、次第に力強く再生して内部の廃滅を恢復するかまたはそれに斃(たお)されるか、二つに一つの危い状態にあったのである。

自分が、こんなにして予期しない時旅行に出られたのも、一方からいえば、彼女の健康が原因となっていた。何時死ぬか分らない、何時どんなことが起るか分らないと、絶えず死に脅迫されていた母は、万一自分が歿した場合、私はどうなるかを考えずにはいなかった。ただ一人ほかない弟妹どもの姉として、私はいやでも彼等の母を務めなければならない。五つから十七八の同胞を置きすてて、私がどうして、自分のためだからといって、楽にゆっくりと外国を遊んで来られよう。生きているうち、一寸でも様子を見て来たら、またその次にはどうにかなるだろう、というのが、母の衷心の計画であったのである。

それを――、如何に私が医学に無智でも糖尿病と分娩とが、どんな危険な道伴れだか位は分っている。――

「大丈夫なの?」

私は、手紙を握り、声を圧えて良人に訊いた。

「大丈夫なの? 私がいないでも。