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なんろ
南路
宮本 百合子
「太陽」1922(大正11)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,813 字 · 63 页
商売人も、医者や牧師も、皆、気質的に野天と、太陽とを操っているように思われる。哲学や、理想や、道義観などは、この多産な、生存に適した緯度の上で、全く「今日」に無用な学究なのだろう。腕を強く、自然と人間とが物々交換で、邪魔な者とは喧嘩をし、助ける者には握手をして暮しているのだ。
八
我々がロスアンジェルスに着いたのは、十月二十三日の朝、十時頃であったろう。
続けさまの旅行をしていると、人は、明る日も明る日も同じ列車と顔ぶれで、週日(ウイークデー)などという観念を念頭から失ってしまう。我々は、汽車が連れて来るままに到着したのであったが、その日は偶然日曜日であった。
予(かね)て時日を知らせてあるX氏は、きっと迎えに来られるだろう。
とにかく、ここで降り、二三日はゆっくり休めるという期待が、何よりもこの市に自分の悦びを繋いだ。
考えて見ると、十八日に紐育を出て以来、殆どまる五日、一夜として、静かな動かない寝台に眠ったことはない。絶間ない動揺と、いつも人中に在るという無意識の意識、時ならない温熱が少なからず私を疲らせた。この上は、一時も早く居心地のよい旅舎(ホテル)に落付き、暖い湯を浴び、心置きなく寛ろぎたいという望が、激しく募っていたのである。