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いんしょう

印象

宮本 百合子

九月の帝国劇場

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,090 字 · 9 页

青空文庫

此時ばかりでなく、「恋の信玄」で手負いの侍女が、死にかかりながら、主君の最期を告げに来るのに、傍にいる朋輩が、体を支えてやろうともしないで、行儀よく手を重ねて見ているのも気がついた。何も、わざとらしい動作をするには及ばない。只、そういう非常な場合、人間なら当然人間同士感じ合うに違いない心を、真面目に自分の心に深めればよいので。

律子も、イサベルを熱心にはやっていたに違いない。けれども、緊張や熱が放散的で、内面の厚さが稀薄なように感じたのは何故だろう。

サンピエール寺院に行き、ベルトンを誘惑しようとする場面は、もう少しどうにか美化しても効果が薄くなりはしなかったろうと思う。

掻口説く声が、もっと蠱惑的に暖く抑揚に富み――着物を脱いでからの形は、あれほかの思案のつかないものだろうか。

ベルトンが、激しい彼女の誘惑に打勝とうとして苦しむのが、却って見物を失笑させるのは、一つは、イサベルの魅力が見物の心を誘惑するのに余り遠いからではないか。常識では、まあ何と云う風だろう、と呟きながらも、心が自ら眼を誘うような独特な魅惑が、ああいう服装にはあるべき筈だし、又、あらせ得ると思う。