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やくどしとエトセトラ
厄年と etc.
寺田 寅彦
「中央公論」1921(大正10)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,428 字 · 19 页
もっとも罎を逃れたとしたところで、外界には色々な蠅打ちや蠅取蜘蛛が窺っている。それを逃れたとしても必然に襲うて来る春寒の脅威は避け難いだろう。そうすると罎を出るのも考えものかもしれない。
過去の旅嚢から取り出される品物にはほとんど限りがない。これだけの品数を一度に容れ得る「鍋」を自分は持っているだろうか。鍋はあるとした上でも、これだけのものを沸騰させ煮つめるだけの「燃料」を自分は貯えてあるだろうか。
この点に考え及ぶと私は少し心細くなる。
厄年の関を過ぎた私は立止ってこんな事を考えてみた。しかし結局何にもならなかった。厄年というものの科学的解釈を得ようと思ったが失敗した。主観的な意味を求めてみたが、得たものはただ取り止めの付かぬ妄想に過ぎなかった。
しかし、誰か厄年の本当の意味を私に教えてくれる人はないものだろうか。誰かこの影の薄くなった言葉を活かして「四十の惑い」を解いてくれる人はないだろうか。
(大正十年四月『中央公論』)