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やくばらい
厄払い
徳田 秋声
「文藝倶樂部 第二巻第九編臨時増刊 海嘯義捐小説」博文館、1896(明治29)年7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,534 字 · 3 页
、地震があろうが、海嘯があろうが、生命より大事の金を流すようなことは毛頭ないはずだ。
でもそういう余裕があれば誰も好んで、自分の親や子を流しはしませぬ、海嘯というのは寝耳に水で、煙草一服する暇にもう一面大海となるのだから、なかなかそんなやさしいことはいっていられないです、どうか理屈は後刻承わりますから、応分の義捐金を願います。
とすかせど正兵衛は、刀豆の顔ばかり見ていて。
俺はまだこの年になれど他に藁一筋の合力を願った覚えのないものだ、だから、鐚一文でも他に遣るのは胸糞が悪くてとても出来ない、こういうことはやはり、太郎作、次郎兵衛のような、不断から人様の合力で飯を喰ってるものにさせるが宜い、長いようでも日脚は早い、こんなことをいってると刀豆が段々虫に喰われて了うようだ、やれやれ。
と取合う気色も見えぬに、茶一杯饗応されぬ助役は悄然として元来し道に取てかえしぬ、正兵衛は後見送りて、皺苦茶の眉根を顰め、ああ厄払い厄払い。