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また、いえ
又、家
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页
此から幾年か居る、その家を貸すものに、唯利害関係からではなく、真個に人の世の生きるらしい友情と好感とを以て接して行けると云うことは、特別、家主、店子の関係に於て嬉しく思われたのである。
幾度も本郷、牛込、青山を往復し、家は、遂に我々が借りられることになった。
大工を入れて、台所に明り窓をつけ、区切って風呂場となる処を拵え、濡縁を修繕させ、引越しの二三日前始めて、私は内の様子を見た。
南向の八畳、寝間によさそうな六畳、三畳と、玄関との間の四畳半。広告にはなくて、深い戸棚つきの納戸があったことは、すっかり我々を御機嫌にさせた。小林さん、金田さんに一日二日手伝って貰い、紀元節の日、半月前には、予想もしなかった引越しを行った。その日は土曜で、翌日が休である為、非常に好都合に行った。
先の家のように、どうせ仮の住居であると云う、先入主を持って居る処は、決して、人の心によい影響は与えない。
引越しの朝八時過、自分は、当然、行くべき処へ戻るとでも云うような、安らかに楽しい心持で、小さい包と一緒に俥に乗った。
やがて上天気になる昼頃の前駆として、外濠の辺には、明るく輝く朝靄が、薄すりと立ち罩めて居た。