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また、いえ

又、家

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页

青空文庫

而も、埋めたての崖の上に建って居る家だから、時に、いやな想像に脅かされることさえある。――

二時間も立たないうち、出かけたAは、いそいで戻って来た。自分にも一緒に見に行くようにと云うので、二人で、青山に出かけた。一丁目の停留場で降り、本郷から来ると右側の、石勝と云う石屋の横を入って、突当りから左に小一町行った処にあると云うのである。天気のよい日で、明るい往来に、実に尨大な石の布袋が空虚な大口をあけて立って居る傍から入ると、何処か、屋敷の塀に一方を遮られ、一方には小体な家々の並んだ細道は霜どけで、下駄が埋る有様である。

暫く行くと、古びた木の門が見えた。一方の柱に岡本未と云う小さい表札がうってある。

「此処だろう」

家主は牛込に居た。其処でAは一つ門の中に二軒の家のある、此処を教わって来たのであった。

建仁寺のひどく壊れた外廻りを見廻し、自分は黙って潜り戸をあけた。そして、左右に浅い植込みを持ち、奥にその女の住う格子戸を眺める門内に立つと、覚えず身を縮めるような心持になった。

何とも云えない、ひどい様子である。

とっつきの左にある木戸は脱れてばたばたになって居る。