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また、いえ
又、家
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,120 字 · 13 页
雨戸の閉った玄関傍のつわ蕗や沈丁花の下には、いやと云う程、野犬の荒した跡がある。
隣りとの境の垣根もすけすけになった処には、塵くたが無責任に放り込んである。
余り空が明るく、太陽の光りが美しいので、幾十日か人気なく捨てられて居た家は、まるで、全体が汚穢そのもののようにさえ見える。――
が、我々は――互に内心ではそのひどさを驚いて居る証挙に口もきかず――そろそろ彼方の格子の横木戸から、庭の方に廻って見た。
古草履や鑵、瀬戸物の破片が一杯散らばった庭には、それでも思い設けず、松や古梅、八つ手、南天などが、相当の注意を以て植えられて居る。庭石が、コンベンショナルな日本の庭らしい趣で据えられ、手洗台の石の下には、白と黒とぶちの大きな猫が、斜な日差しを受けて、踞って居る。
乱暴に乱されては居ても、些か風情のある庭の作りが、我々の注意をひかずには居なかった。片町の家には只空地があるばかりで、我々が素人の好みで、ぽつぽつ植込んだ植木が僅かに潤いを与えて居る位である。
無言のうちに少しなだめられて、二人は、ずっと、門傍の木戸から、奥に行って見た。此方にも鍵なりの地面があり、棕櫚や梧桐、楓らしいものなどが植って居る。