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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

彼女が本気で云ってるのかどうか、彼にはさっぱり見当がつかなかった。いい加減に弄ばれてる気もしたし、真面目な同情を寄せられてる気もした。

「散歩にでもいっていらっしゃいな。気が晴れていいかも知れないわ。」と保子は云った。

周平は云われるままに何の気もなく立ち上った。然し立ち上るともう外へ出たくはなかった。そして二階へ上りかけたが、ふと気にかかって、隆吉が寝てる室へはいってみた。

隆吉は氷枕を止して空気枕で寝ていた。熱は七度五分以下に下っていた。頭を少しずらせ加減に横向けて、周平の方をじっと眺めた。

「気分はどう?」と周平は尋ねた。

隆吉はそれに答える代りに、更にまじまじと周平の顔を見戍った。周平はその視線を避けて、枕頭の方に坐った。

静かだった。高く昇った日が外を一杯照りつけてるのが、更にその静けさを助けた。静かな上に余りに明るかった。隆吉の高い凸額が瀬戸物のようにこちこちして見えた。窶れてほっそりとした頬の中に、高く薄い鼻がすっと通っていた。周平はそれを見てると変な気になった。その凸額に拳固を喰わせその鼻を折り挫いてやりたい気がした。何で隆吉に対してそんなに腹を立ててるのか、自分でも分らなかった。