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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
それが済むともう何もすることがなかった。みすぼらしい身の廻りが淋しかった。手拭を下げて銭湯に行ってきた。それから、室の中に寝転んで一日を過した。二時頃から窓に一杯西日がさした。その光が夕方俄に陰って、空が曇ってきた。そして暗い夜となった。空の中が蒸暑くて息苦しかった。
周平は身を動かすのが堪らないような気がした。身を動かす度に心の中の空しい寂寞さがゆらゆらと揺いで、自分の身体を包み込んでしまいそうだった。じっとしていたかった。何物にもそっと手を触れないでいたかった。
むりに頭の働きを押えつけ、凡てを失ったという気持だけを懐いて、彼は早くから床にはいった。そしてぐっすり眠った。
その眠りが、翌日になってもまた彼を囚えた。朝食後じっと机にもたれていると、いつのまにかうとうととしていた。ほっと眼を覚して、此度は寝転んでみたが、やはりいつしかうとうととしていた。眼を覚してるだけの気力が無くなったかのようだった。しまいに彼は、そのだだ白い眠りの中に身を投げ出した。
そういう睡魔の下から、保子のことが影絵のように浮き上ってきた。うつらうつらとした夢心地の薄暗い背景から、彼女の澄み切った眼がじっとこちらを覗いていた。