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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

自暴自棄から次第に真面目なヒューメンな気持へ落着いていく心理、それが出なければ駄目だね。所が今の僕では、とてもそこまで突込んでいけそうもないから、構想の途中で止してしまったが、考えてみれば筋が少し陳腐だね」

周平は今そんな話を聞きたくなかった。

「おい何処にしよう。」と彼は云った。

村田は話の腰を折られて、きょとんとした眼付をした。

「今晩は君と二人きりでゆっくり話したいね。」

「よし、誰も来ない家に行こう。」

「蓬莱亭の三階はどうだい。」

「さあ。」と村田は一寸首を傾げた。

「僕はまだ一度も上ってみたことがないんだが、丁度いい折だからどうだろう。」

「そうだね。」と村田はなお決しかねてる様子だったが、突然大きな声で云った。「じゃそうしよう。だが君、案外汚い所だぜ。」

村田はぴゅうと口笛を吹いて、それからまた他のことを云い出した。周平はそれをいい加減に聞いてるうちに、ふと気がかりになって、懐の淋しいことを断らなければならなかった。

「心配するな。そんなことは分ってるよ。」と村田は云った。

三十二

蓬莱亭の前まで行くうちに、周平の心は一種の不安を感じだした。