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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

そして、その底にはまだ他に何かあることも、よく感づいていた。然し、もう弁解や穿鑿をすべき時ではなかった。凡てを盲目的に踏みにじってゆく方が、最も近途らしく思われた。何処に出る近途かということは分らなかったが、ただそうすることによって、最も早く何処かに出られそうな気がした。

濛々と煙草の煙が立罩めてる階下の広間で、煖爐の方へ足先を差出しながら、周平は一人黙りこくって、勧められる杯だけを、片端から空けていった。其処へよくお清は割り込んできた。

「井上さん一人を酔わしてどうするつもりなの。皆でよってたかって、可哀そうだわ。」

「ようよう……その通り、だから君が少し助けてやるさ。」

「ええ、いくらでも私が引受けてやるわ。」

そして彼女は、周平の前にある杯を一つぐっと干したが、それからまたぷいと向うへ行ってしまった。

「おい、井上、黙ってるって奴があるか。何とか感謝しろよ。」

周平はきょとんとした眼を挙げて、皆を見渡した。彼等の顔が馬鹿げて見えた。彼は吐き出すように云った。

「僕の知ったことじゃないさ。」

「なんて、澄してる所を、お清ちゃんに見せたいね。」

だが、お清は向うの隅に立って、周平の方へちらと目配せをしていた。