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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

だが、君が特別に奥さんから贔屓にされてるという自惚があるのなら、問題はまた別だがね。」

周平は痛い所をちくりと刺されたような気がした。それだけにまた、不快な厭な気持になった。彼は黙っていた。

村田は彼の様子をじろりと眺めたが、急に話題を転じた。

「君、横田さんの野心……抱負と云った方が本当かな、それを君は……。」

丁度その時、二人は或る肉屋の前を通りかかった。村田は足を止めた。

「ここで肉でもつっつこうじゃないか。」

二人は中にはいった。

六

村田は大酒家だった。周平も可なりいける方だった。二人は飯を忘れて、しきりに杯を重ねた。暑くなると障子を開け放った。もうすっかり暮れていた。庭の植込のなかに淡い柱灯がともっていた。凸凹をなした庭の窪みに、小石を敷いた大きな空池があって、風に揺ぐ植込の茂みの間に、ちらちら見えていた。縁側から覗くと、谷間のような感じだった。その方を眺めながら、取留めもない話をしてるうちに、二人は可なり酔ってしまった。新らしく銚子を持ってくる女中が、肉の鍋に何度も割下を注していってくれた。

「君と酒を飲むのは暫くぶりだね」と村田は縁側の柱によりかかりながら云った。