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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

それでも横田さんはああいう人だから、自分自身を一歩高い所へ置いて考えた末、保子さんの選択に任せるの外はないと結論したのだ。これは横田さんの人格者たる所以でもあるし、また一方からいえば、聡明なる所以でもあるのだ。なぜかって、保子さんの選択は初めから分りきってる。既に二人の間は、両方の親の了解もあるし、互の気持も進んでるし、それに、吉川さんの家は零落していたものだ。吉川さんは、詩人的素質を備えた天才肌の人だったそうだが、貧乏な天才詩人というものは、恋人にはいいか知れないが、良人としては不向きだね。人間に何となくどっしりした所のある横田さんとは、少し均衡がとれない。どの点から考えて見ても、保子さんは横田さんを選ぶにきまってる。

「所が、保子さんはなかなかその選択を与えなかったのだ。そして、二人に向って或る問いを発したものだ、あなたは私を恋人として愛するのか、もしくは良人として愛するのかって」

村田はそこで言葉を切って、周平の顔を覗き込んだ。周平は変な気がしてきた。

「本当の話なのか。」と彼は尋ねた。

「本当だとも。そこが如何にも奥さんらしいじゃないか。」

周平は黙って村田の顔を見返した。