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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

はては苛立たせられた。その余憤を彼は、知らず識らず隆吉の方へ持っていった。

周平がやって来る前に、隆吉はいつも自分の四疊半にはいって、小学校一年級の教科書を机の上に並べていた。そして周平の姿を、じろりと上目がちに迎えた。

「何か分らない所はありませんか。」と周平は云った。

「ありません。」と大抵隆吉は答えた。

それでも隆吉は時々、二三の問いをかけることがあった。周平はそれを丁寧に説明してやった。然し隆吉は上の空で聞いていた。説明が済むと、片頬に少し笑靨をつくって、周平の顔をまじまじと見ていた。周平は馬鹿にされた気がした。知ってるのをお義理で尋ねたのだ、ということが感じられた。彼はわざと云った。

「分ったの。」

「ええ。」と隆吉は澄して答えた。

「もう何にも分らない所はありませんか。」

「ええ。」と隆吉はまた答えた。

周平は読本を取って、それを読ましてみた。隆吉はすらすらと読んでいった。学校で教わらない所を読ましてみようかと、周平は考えた。然しそれは、教室の授業に対する興味を薄らがせることだった。復習の折に分らない点があれば、いくらでも教えてやらなければいけない。