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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
本箱の抽斗を探していると、丁寧に紙に包んだものが出て来た。中には、小形の洋罫紙が十枚ばかり、二つ折りにしてはいっていた。その一行を何気なく読んで、彼は危く声を立てようとした。それから、辛うじて驚きを押し鎮め、室の中を見廻し、抽斗を元のように閉め、洋罫紙を室の真中に持ち出して、その両面に細字で書いてあることを、彼は一心に読み始めた。
十五
十月六日――俺は死を厭うものではない。然し好奇心によって死にたくはない。
夜、〇・〇〇三に当る分量を服用している時、ふと〇・〇〇五の極量を越してみたらという気がした。次の瞬間には危いと思った。手先が怪しく震えた。そして厳密に分量を検査した。勿論千倍の溶液だから、少しの差は構わないようなものの、誤ってつまらない結果に陥りたくはない。
十月七日――何という爽快な気持だろう! 陰鬱にぼやけていた世界が、俄に明るくなったのだ。凡てのものが輝いて見える。軒先に流れる日の光りが、それとはっきり見て取られるようだ。
あの重苦しい幻影が消え失せたことは、俺にとって最も喜ばしいことなのだ。
十月八日――夜になって、頸筋に一種の硬直が感ぜられる。