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はんこう

反抗

豊島 与志雄

「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页

青空文庫

十月二十日――朝と夕方と二回、〇・〇〇三に当る分量を服用する。夜、軽い頭痛を覚ゆる。

十月二十一日――朝起きると、軽い眩暈を感じる。それもすぐに止む。空が綺麗に晴れ渡っている。視力がはっきりしている。

珍らしく郊外に出てみる。櫟林に寝転ぶ。涼しい風が何処ともなく流れてきて、枯葉がひらひらと舞い落ちる。淋しい梢の間から、白い浮雲が見える。その雲をじっと見ていると、櫟林や自分自身や大地がゆるやかに動き出す。大きな波に揺られ流されてるような心地。雲は何時までも空高く懸っている。大地が非常に頼りなく思われる。……ふと気づくと、雲が徐々に空を流れてるのであった。あたりを見廻せば、木の幹も草の葉も地面も、ひっそりと静まり返っている。かさかさと干乾びた音が何処かでする。黄色っぽい日脚が妙に弱々しい。……秋は寂しいものだと思う。一人で居るに堪えなくて、家に帰る。寂しさが心の底にこびりついて離れない。

家に帰っても、母とは口を利かない。そのおずおずした眼付がいやに圧迫してくる。隆吉がよちよち歩いてる。頭ばかりが大きくて、栄養不良らしい萎びた身体付をしている。自分の児だと思うと変な気がする。