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はんこう
反抗
豊島 与志雄
「国民新聞」1921(大正10)年8月4日~11月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,121 字 · 282 页
それを再びなぜ始めるかは、俺自身にも分らない。今俺の頭の中には、互に矛盾する無数のものが錯綜している。
今月になって五回、〇・〇〇二に当る分量を服用した。反応微弱。
十一月九日――皮下注射と内用との身体に及ぼす影響の差が、よく分らない。今日少し調べてみたけれど、やはり分らない。然し、顳※(「需+頁」、第3水準1-94-6)部の皮下注射が弱視に効果あるとすれば、少し分量を増した内用も、やはり効果あるべき道理である。その上俺は元来胃腸が非常に悪い。薬の内用に依って、胃腸粘膜の鬱血を散じてその働きを佳良ならせるならば、一挙両得というべきである。その上俺は、可なりアルコールに害を受けている。もしこの薬によって呼吸中枢を興奮させ得るならば、同時に三得となるわけだ。
十一月十一日――視力の減退が著しい。試みに眼鏡屋へ行ってみたが、近眼の度が進んでるのではなかった。物の表面をしみじみと見ることが出来ない。輪郭も凡てぼやけている。
薄暗い世界だ。何もかもぼんやりしている。気が苛立ってくる。一寸したことでも癪に障る。何かに脅迫せられてるような心地。
十一月十二日――考えまいとしても、いつのまにか考えている。