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おじとおいと
叔父と甥と
岡本 綺堂
――甲字楼日記の一節――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,487 字 · 5 页
絵を見れば絵も薄墨や秋の花
十二日、青山墓地にて埋葬のこと終る。この日は陰りて雨を催せり。
青山や花に樒に露時雨
十五日は初七日、原田春鈴君来りて、その庭に熟したりという枝柿を霊前に供えらる。
まざ/\と柿食うてゐる姿かな
この日、額田六福の郷里よりも霊前にとて松茸一籠を送り来る。
初七日や松茸飯に豆腐汁
家内の者ども打連れて青山へ墓参にゆく。この夕、眠られず。
こほろぎや人になかせて夜もすがら
憎い奴め叔父を案山子に残せしよ
十六日、午後より青山へ墓参にゆく。うららかに晴れたる日なり。英一の墓前には大村嘉代子が美しき草花を供えてあり。その花の香を慕いて、弱れる蝶一つたよたよと飛ぶ。
なくは我なかぬおのれや秋の蝶
十八日、英一の机本箱を整理す。書きさしの下絵などを見出すにつけて、また新しき涙を誘わる。形見としてその二つ三つを取納め、余は引き裂きて庭に持ち出で、涙の種をことごとく烟とす。
かき寄せて焚くや紅絵の散紅葉
十九日、庭の立木に蝉の止まりて動かぬを見る。試みに手を触るればからからと音して地に墜ちたり。かれは已に殻ばかりとなりけるよと思うにつけて、英一の死のまた今更に悲しまる。