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とりかえしものがたり

取返し物語

岡本 かの子

「大法輪」1934(昭和9)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 28 页

青空文庫

その理由言うて聞かして親鸞影像を、なお暫らく三井寺方へ預り置かんとすれど、勢込んだる門徒衆の執心。影像堂の新築落成と共に取り戻しに来るは必定。そのゆえ無理難題を言いかけ、此方で影像擁護の為め、今暫らくそちらへの取戻しは、諦めさせ置こうとの、此の方の苦肉の親切。その方便を正直にうけ取って命を捨つる親子の信念。斯かる例を見るからは、最早や如何なる怨魔出で来るとも、退散させて弥陀の念仏。一宗再興疑いなし。出来したぞ堅田の源右衛門。この上は心よく、親鸞影像を戻し返してつかわすのみか、他宗ながら忰源兵衛の菩提も、こなたで弔い追善供養。三密瑜伽の加持力にて、安養成仏諸共に、即身成仏兼ね得させん。心を安めよ仏子源右衛門』

源右衛門(額ずきつつ)『老先短いこの年寄が、忰に代って生き永らえ、悲しいやら面目ないやら、心苦しゅうござりまするが、御門徒宗が他宗の智識に、これほどまでに褒められる手柄をしたと思えば、どうやら心が慰められます。お察しなされて下さりませ』

(法師五六人、親鸞聖人の木像を担ぎ出して来る)

阿闍梨『親鸞どのもいたわしゅう思召されていらるるだろう。それ、各僧、源右衛門の背に負わしてやられよ』